水の話

水の話(1) 軟らかい水と硬い水

 関西地方は台風のたびたびの上陸で、幸い水はたっぷりのこのごろです。

 水と一口に言っても、頭に浮かぶ水は人さまざまでしょう。激しい雨も水ですが、時には悲惨な結果をもたらすことがあります。口にして美味しい水、庭木や盆栽にやる水、あるいは洗濯や風呂に使う生活用水、水資源のこと、安全性のことなど、いろいろあります。

 延寿石けん、入浴剤延寿湯温泉も水があってのこと、今回は軟水・硬水を中心に水の話題を取り上げます。

1.ミネラルウオーターが売れ行き好調

 わが国のミネラルウオーターは成長商品として注目を浴びております。国内産は前年比9%増(2003年)で、輸入品はなんと25%(2003年)も前年を上回って伸びています。

 つい先ごろまで、わが国では飲料水が商品として今日ほど大量に出回ることは考えられませんでした。その一つは水資源が豊かで、良質の上水道が広く普及していたからです。

 しかし、水道のない時代のこと、江戸では美味しい水の行商はあって繁盛していました。一つの風物詩になっておりました。ついでながら、江戸では伊豆・熱海の温泉湯を販売する商売もあったといいます。

 ミネラルウオーターの隆盛を招いた背景には、都会の水道では河川部下流での取水が行われ、いわゆる水の再利用で水質が悪くなって味が落ちたこと、天然指向で美味しい水への憧憬のあること、包装容器・物流の発達で手ごろな値段で入手でき、持ち運びも容易になったこと、などがあります。

 このミネラルウオーターの美味しさの源泉はどこにあるのでしょう。日本の深山の水、あるいは欧州アルプスの水など、美味しい水は美しい風景から生まれたかのごとくです。

2.美味しい水とは

 1980年代に関西で臭い、まずい水道水が話題となり、その際、厚生省では研究会が発足しました。小島座長は著書で美味しい水の条件を次のように示しています。

 「ミネラル成分、硬度、炭酸ガス、酸素がそれぞれ程よい濃度で含まれ、異臭味のないこと、金属成分は多量に含まないこと、水温は10~15度」であること。

 味はこのミネラル成分に多くのかかわりがあるようです。硬度というのはミネラル成分の主要部分を占めており、ともに水の味を大きく左右します。

 飲料水におけるミネラルというのは、雨水が地中に浸透して地層を通り抜けるときに岩石から水に溶け込んだ鉱物質全体をいいます。すなわち、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、マンガン他で、このうちの、カルシウム、マグネシウムの合計量を硬度とよんでおります。したがって、ミネラルの多い水は一般的に硬度は高くなります。

 ミネラルが多いと「堅くてしつこい味」、多すぎると「苦味」「渋味」がして、逆に少なすぎると「淡白でこくがない、気の抜けた味」であるといわれております。

 美味しい水の硬度は50mg/l以下といわれております。水道水の快適水質基準では硬度は10~100mg/l の範囲内と定められており、通常は水道水の硬度は20~80mg/l が多いようです。日本人には硬度50mg/lが口当たりよいと好まれています。

 神戸灘の名酒は「宮水」を使い、ここに美味さの秘訣があるといいます。「宮水」は六甲山の花崗岩の層を通過してきた地下水をくみ上げた水で硬水です。H社の出している六甲山のミネラルウオーターは硬度83ですので、かなり高いことがわかります。

 環境庁の名水100選では水の硬度分布は次のようになっております。

硬度  0~10mg/l  6点
   10~30    28
   30~50    18
   50~70    17
   70~100   10
   100以上     3

 欧州の水道の硬度は200~400mg/l 前後であり、硬水が好まれておりますが、日本では300mg/l以上になると飲用不適です。市販のミネラルウオーター、エビアンは150~300mg/lの中に入っております。わが国の美味しい水は軟水ですが、アメリカ、欧州、中国は硬水です。

 WHOは硬度60mg/l 以下を軟水、120mg/l までを中硬水、180mg/l までを硬水、180mg/l 以上を高硬水と呼んでおります。

3.生活用水では硬水は難物

 硬水を食物の煮物や生活用水として使った場合、水垢(みずあか)や、アク、沈殿物の析出、付着が問題になります。これは水の中のCa イオン、Mgイオンがかかわっております。硬水では特にこれらの含量が多いので目立ちます。

 たとえば、鶏がら、牛骨の長時間煮込むとコラーゲンから溶け出たゼラチンがCa イオン、Mgイオンと結合してアクとして浮上します。また、茶を硬水で入れると、タンニンがCa イオン、Mgイオンと結合して色、味、香り成分の浸出を妨げますので、まずいお茶になってしまいます。

 温泉で石けんを使ったとき、石けんの泡たちが悪く、きれいに洗えない場合があります。これは石けんのなかの脂肪酸がCa イオン、Mgイオンと結合して脂肪酸の働きを妨げるからです。これと同じことが硬水のときに起こります。ただし、石けんでも合成洗剤の場合は化学構造、洗浄作用が異なるのでこれは起きません。

 家庭用の電気ポット(湯沸器)も長年使うとCa イオン、Mgイオンによる水垢の付着で内部が汚れるので、クエン酸による洗浄装置のついている器具もあるほどです。工業用のボイラーでも、硬度の高い工業用水を使うと水垢(スケール)が付着します。

 搾乳の場合、洗浄水のCaイオンが牛乳の乳タンパク質と結合して牛垢(乳スケール)となって器具に付着し、器具洗浄を困難にしています。この場合は、アルカリ洗剤を使って牛垢を除去しています。牛垢(乳スケール)という汚れは浴槽内においても起こりうる汚れです。

 硬水で延寿湯温泉を使った場合、延寿湯温泉には炭酸ナトリウムが配合されておりますので、硬水の中のCa イオン、Mgイオンと反応し、Ca イオン、Mgイオンを取り除き、軟水化します。硬水中のCa イオン、Mgイオンは、通常の水道水に比べると量が多いので、延寿湯温泉を入れたとき、析出物の目立つ場合がありますが、浴槽内はアルカリ性となり、石けんの泡立ちはよくなります。一般に硬水のミネラルウオーターは弱アルカリ性です。ただし、これには種類がいろいろあるので、あくまでも一般論です。

<参考文献>

水の特性と新しい利用技術―農業、食品、医療分野への応用、㈱エヌディーエス(2004)
久保田昌治、水のはなし、日刊工業新聞、(2004)
女子栄養大学栄養科学研究所編、水と健康、女子栄養大学出版部(1997)
藤田紘一郎、癒す水、蝕む水、NHK出版、(1996)

水の話(2)薬の水と純度

 生薬の古典、中国の「本草綱目」あるいは、わが国、江戸時代の本格的本草書、貝原益軒の「大和本草」をみると、冒頭にいろいろの水が出てきます。やはり、水は単純でなく、医薬用に使うにはそれぞれ特徴があって、それを活かしていたようです。

 今回は、医薬用の水とその純度に的を絞ります。

1.本草書に出てくる水

 「本草綱目」(明:李時珍、1596年刊)といえば、中国の本格的本草書で、わが国の江戸時代の医療界に大きな影響を与え、また貝原益軒の「大和本草」(1709年刊)の元本にもなっております。

 「本草綱目」には1900点の生薬が収載されており、その冒頭に雨水に始まり、全部で43種の水が並んでいます。

 貝原益軒の「大和本草」は「本草綱目」ほどではなく、水、熱湯、湯、浴湯、温泉、火井、雹、苦潮、などで、ほかに石脳油などが出ております。

 一方、江戸時代の食物について述べている、人見必大の「本朝食鑑」(1695年刊)では次のような水があがっております。食物の本ですから、いずれも飲料水が大部分ですが、医薬用も取り上げています。

 露水、臘雪水、夏氷、流水、井泉水、山巌泉水(山中の石の間を走る水)、節気水(季節変わり目の水で、たとえば元日の水は井華水、若水などという)、醴泉(湧き水で甘みのある水。れいせん)温湯(温泉の湯)など。

 薬を服用するとき、江戸時代のことですが、雪解け水を、当時は臘雪水といって、特に薬を煎じる際に使用を薦める場合がありました。雪解け水は、同じ水でも活性化されており、水分子の固まりの構造が異なり、薬物の溶出に効果があるのではないかという説があります。

2.局方の水

 化学を学んできた人は多分、蒸留水の味をご存知でしょう。蒸留水は「味気ない」の代名詞かのごとくで、これを美味しいと言って飲んだ人はまずいないでしょう。しかし、蒸留水も今では名前が局方から姿を消して、精製水に代わっております。精製水は常水を蒸留、イオン交換、超ろ過、またはこれらの組み合わせで精製した水と定義されておりますので、蒸留水がまったくなくなったわけではなく、精製水の一種に含まれております。

 11局までは注射用に用いる水は蒸留水に限られ「注射用蒸留水」という名称でしたが、蒸留法で「注射用蒸留水」を作るには多大のエネルギーを要するため、省エネの立場から別の方法、すなわち高分子膜ろ過法に切り替わり、名称も「注射用水」となりました。

 精製水の原料には常水を使うと局方では規定しております。常水は水道水、もしく井水が指定されております。一方、精製水よりも、さらに純度を上げてゆくと、滅菌精製水、注射用水があります。

 参考までに、蒸発残留物の項目を見てみると、次のような数字が出ております。

常水 精製水・滅菌精製水・注射用水

500mg/l以下  10mg/l以下 

3.美味しい水

 蒸留水・精製水が不味いのは混ざり物が少なく、純だからです。前号にてミネラルウオーターを取り上げましたが、ミネラルウオーターが美味しいのはほどほどに混ざり物があるからです。

 環境庁の名水100選のリストをみても、それぞれミネラルが含まれ、硬度は1.6から

 264まであり、またPhも幅があり、やや酸性よりです。蒸発残渣は30~200mg/lあります。一般で言う名水というのは茶の湯や醸造用に使う水に言いますが、飲用だけではなく、生活用水から健康に良い水、さらには信仰対象になっている霊水も含まれる場合もあります。しかし、入浴や洗顔に名水をという話はあまり出てきません。

 最近は、天然名水と市販名水、人工名水などに大きく分けられて、名水も種類が増えてきました。環境庁の名水はもちろん、次のように天然名水だけが対象になっております。

 天然名水  天然の湧き水  水質的に良好な美味しい水

  井戸水、沢水  古くから言い伝えのある地域密着の生活用水

 かつての厚生省の「美味しい水研究会」(1985.4.25)による美味しい水の条件は次のとおりです。

<水質項目> <美味しい水の要件>

蒸発残留物      30-200mg/l
硬度         10-100mg/l遊離炭酸       3-30mg/l過マンガン酸
カリウム消費量    3mg/l以下
臭気度        3以下
残留塩素       0.4mg/l以下水温         最高20度 

 このように美味しい水にはミネラルなど有益な成分が適量に含まれております。これらの有益な成分を含まないのが蒸留水です。

 酒の醸造に用いられる水は各地の名水が選ばれて、この「美味しい水」に該当するものが使われております。

<参考文献>
久保田昌治、水のはなし、日刊工業新聞、(2004)
女子栄養大学栄養科学研究所編、水と健康、女子栄養大学出版部(1997)
台十三改正日本薬局方解説、広川書店(1996)  

水の話(3)機能水

 このところ、水に活性を付加した「機能水」というのが増えてきました。

 「機能水」あるいは「活性水」というのは、まだ、公式の場には登場していないので、これらの水の定義は明らかではなく、呼称そのものも認知されていないようです。ここでは便宜上、通常の水に比べて、本来エネルギーの高い水、または何らかの方法でエネルギーを高めた活性の高い水ということで、「機能水」という用語にて説明いたします。

 機能水は普及の歴史が比較的浅く、これからに可能性を秘めており、医療、農業、漁業、工業のいろいろの分野で応用されています。また、健康増進にも大きく関与しておりますので、民間医療の分野ですが、薬局の店頭にもいろんな機能水が並んでおります。

1.機能水とは何か

 機能水というのは何らかの加工による、もしくは添加による人工水であるということで取り上げます。従ってここでは、天然のミネラルウオーターや、海洋深層水などは除外いたします。

 機能水とは一説によれば、科学的な処理で水の分子を細分化する水溶液をいい、水分子のクラスターが細分化されものであるという説明があります。水分子のクラスターというのは今後もたびたび出てきます。水の分子はH0ではあるものの、H0は分子間で手を取り合い、実際には、ちょうどブドウの房のように重合した形状で存在しています。

 通常水の分子は50~70個、もしくは200~300個重合しているといいます。

 このブドウ状の水分子をバラバラにすることを活性化といい、たとえば、電解水は30.7%、磁界水は56.3~58.3%程度に細分化されているそうです。

 たとえば、水の分子は磁界を通過すると一部がイオン化してクラスターが小さくなり、表面張力が低下して界面の活性が高まります。この機能水は狭い間隙にはいりやすくなります。

 薬を服用するとき、江戸時代のことですが、雪解け水を、当時は臘雪水といって、特に薬を煎じる際に使用を薦める場合がありました。雪解け水は、同じ水でも活性化されており、クラスター構造が異なり、薬物の溶出に効果があるのではないかという説があります。

 クラスターを細分化すると、水の分子の大きさが小さくなるので、物質への浸透力が強くなるとか、界面活性が大になるとか、新しい水の性能が出てきます。この新しく付加された性能のために、医療以外の、農業、漁業、工業の分野で、水の活性化=機能水が研究されております。

 活性化された水と洗顔、入浴、および延寿せっけん、入浴剤延寿湯温泉の使用につきましては、まだ弊社でも研究していないし、詳しい文献がありませんので、後に機会をみてご紹介することにします。

2.機能水の種類

 いろいろの水関係の書物に出てくる機能水を並べてみました。冒頭に述べましたように、機能水は学会とか行政の場にはほとんど出てこないため、定義、用語はまちまちです。ここでは、適宜、筆者の判断でまとめました。人によっては用語の解釈が異なり、別の見解もありえますことはご承知置きください。

①還元水:生体内の活性酸素を消去させる性能を有する水。これには天然型と人工とがある。天然水は除外するとして、人工水では電気分解によるアルカリ性電解水をいう場合が多い。これはアルカリイオン水という場合もある。のちに取り上げる。

②電位水:

③超純水(ピュウアウオーター)

④磁化水・磁気処理水・磁界水:水道管の間に磁石を置き、磁場に対して直角の方向に水を通して処理した水、界面活性作用を持つ。農業分野でも使われる。  

⑤πウオーター

⑥電子水

⑦波動水

⑧超音波処理水

超音波を水に当てる。液中での気泡や気体微粒子の発生で活性化される。クラスターが小さくなるといわれている。農業用にも使われる。

⑨電磁波処理水(高周波処理水):水に振動電磁力を加えて処理した水

⑩エレメント水

⑪電気分解水・電解水・電気分解生成水・電解オゾン水・電解強酸性水(強電解水)
電解陽極水・強アルカリ性電解水:これらは水の電気分解によってえられる。

  • 陽極水、陰極水、両極水などが発生する場所で分けられる。
  • 強電解水というのは前処理にて軟水化し、電解補助剤として、を電気分解して、陽極側にて得られる水。
    これは強酸性(pH2.2~2.7)である。強い殺菌力と酸化力を持つ。
  • 弱酸性電解水は少量の塩化ナトリウム、もしくは塩化カリウムと少量の塩酸を含む水を無隔膜電解槽を用いて電気分解した水。弱酸性(pH4~6)
  • 強アルカリ性電解水(陰極水):強い還元力を持つ。

⑫アルカリイオン水(飲用アルカリ電解水):上気の電気分解水のグループに入る。
利用も広がっており、この名前で世の中に出ている場合が多い。

⑬ガスコントロール水:オゾン水がその例の一つ、オゾンガスを水に分散、または溶解させる。ほかにキセノンガスによるキセノンガス水などもある。逆に、含有するガスを除去した水、脱気水、脱塩素水もある。

⑭セラッミクス処理水 クラスターサイズが小さくなる。浸透性が大。処理に使うセラミックスには天然と人工がある。
天然タイプの例:麦飯石、医王石、希皇石

<参考文献>

水の特性と新しい利用技術―農業、食品、医療分野への応用、㈱エヌディーエス(2004)
久保田昌治、水のはなし、日刊工業新聞、(2004)
女子栄養大学栄養科学研究所編、水と健康、女子栄養大学出版部(1997)