草木染めと浴槽の汚れ

 平安時代の源氏絵巻、江戸時代の浮世絵など絢爛たる衣装を見ていると、これが果たして草木で染められたのか、とその鮮やかな色彩に目を見張ることがあります。

 近代の化学染料は明治になって入ってきて一挙に広まりましたが、とにかくそれまでの長い間、生薬が草木染め材料の主役となって鮮やかな色、渋い色を発色させてきました。

 ところで、生薬を主原料とする延寿湯温泉には、草木染めになるものは配合されてはいませんが、生薬の色合いは豊かであるため、延寿湯温泉の生薬を染めに使うことは出来ます。使い方によっては美の源泉たる染めが、残念ながらタオルや洗濯物、浴槽を染めて、時には汚れにつながる場合があります。

1.染色に使われる草木

 古代日本にて、染色の材料として用いてられてきた植物には次ぎのモノがあります。

 スオウ(蘇芳)、 ムラサキ(紫根)、 ハジ(櫨)、 コウカ(紅花)、 アカネ(茜)

 クチナシ(サンシシ)、 キハダ(黄柏)、 苅安、ツルバミ

 その他 杉,ヒノキ、栗、ヤマモモ、藍、石榴、梅、桑などがあげられます。

これらの大部分は生薬として使われております。たとえば、紫根は江戸時代の薬種問屋では、色素の少ないものや、色の黒ずんでいるものは医薬用に、紫色の美しいものは染め用に回していたといいます。染料用には樹皮、根皮などが多く使われております。

 延寿湯温泉には上にあげたような美しい色を出す生薬は入っておりませんが、黄、茶系統では染料として使うこともできます。しかし、あくまでも延寿湯温泉は入浴剤ですので、染料という立場で見ると量は極めて少なく、普通はわずかに色がつくという程度です。

2.発色させる場合

 染料としての植物には媒染剤として、わら灰、椿の灰、食酢、石灰などが用いられました。現在でも一部で再現されている草木染では上述のような特定植物の灰は使われております。媒染剤というのは、繊維に染料がうまく染み込まないときに使う薬剤で、木の灰などアルカリ性のものが少なくありません。実際には微妙な色合いを出すために、酸・アルカリの加え方が難しく、熟練を要したようです。さらに、染めを堅牢なものにするために、何回も灰汁ですすぐことも色の種類によっては行われました。

3.水垢と浴槽の汚れ

 ポットタイプの湯沸器でも長い間使っていると、水垢が付着してきます。そのために、クエン酸を用いて洗浄することが奨められており、湯沸器の機種によっては「クエン酸クリーニング」という機能がついているのもあります。水道の水を使っているだけでも、長年にはこのような付着物が出てきます。

 これほど、極端ではありませんが、浴槽にも同じような現象の出る場合があります。

 とくに、使用する水の硬度によって異なり、一般に硬水と言われている、硬度の高い水を使うと、いわゆる水垢が出やすくなります。延寿湯温泉はアルカリ性ですので、硬水中のカルシウムイオンと反応して、炭酸カルシウムの結晶が浴槽壁に析出する場合があります。析出すると、結晶は無色透明で、壁面がザラザラしてきます。

 これを防止するためには、用済み後の湯をすぐ抜いて流し、水で軽く浴槽を洗っておくことです。

 結晶が目立つ場合にはクエン酸の使用をお奨めします。量的には大匙1杯のクエン酸を洗面器に溶かして使います。クエン酸は薬局あるいはスパーストアなどの洗剤コーナーに並んでおります。最近はクエン酸入り洗剤も出ているようです。

4.浴槽の材料と延寿湯温泉

 浴槽の材料はいろいろあります。 例えば、次ぎのような材質があげられます。

 強化プラスチック、ステンレス、ホーロー、木、タイル、セラミックス、大理石、浴槽の汚れは材質と大きな関連があります。

<大理石> 延寿湯温泉の場合、材質を損なうおそれがあるのは大理石で、これは人工、天然を問わず、使用はお奨めできません。簡単に言えば「使用禁止」にあたります。 延寿湯温泉はアルカリ性ですので、大理石と反応し表面の艶がなくなることがあるからです。

<強化プラスチック> これは表面が柔らかく、通常は細かい傷が出来ているので、汚れが落ちにくく、万一、汚れの出てきた場合、クレンザーでも落ちにくいので要注意です。

<木質系> いわゆる天然素材で、好ましいタイプですが、延寿湯温泉の場合、着色が心配です。 上述のように、もともと、生薬は天然の染料なのです。それに、延寿湯温泉の場合はアルカリ性ですので、堅牢に染め付けているようなものです。特に木質は相性がいいので、染まりやすい傾向があります。しかし、その日のうちに流して、水で洗浄しておけば、通常は着色はありません。

<ステンレス、ホーロー、タイル、セラミックス> 汚れが付きにくく、例えついても、汚れの除去がしやすいので、比較的安心できる材質です。しかし、そうはいっても、いつまでも浴槽に湯を残さないで、サット流して、洗剤を使い水洗いするのが原則です。たとえば、茶のみ茶碗でも、茶渋の汚れを落とすには水で流すだけでは十分ではありません。汚れが濃くなると、クレンザーつけてごしごしこすらないと、落ちません。

5. 浴槽の汚れの落とし方

 不幸にして、浴槽に汚れが目立ってきたら、洗剤、薬剤を用いて洗わなければなりません。

 浴槽の汚れには、いろいろあります。

  1. 皮膚の脂肪分、剥離部など動物油脂系のもの
  2. いわゆる水垢、炭酸カルシウムの結晶など、アルカリ性の化学物質
  3. 生薬の微粉付着、もしくは溶出した生薬成分による染着

 これらの汚れが浴槽に付着した場合の洗浄方法ですが、浴槽の材質が柔らかい場合、と硬質の場合と幾分異なります。
 まず、汚れの種類では 浴槽の材質により、異なりますが、一般的には

  1. にはバス用洗剤、台所用洗剤などが良いでしょう。
  2. にはクエン酸など穏やかな酸性の洗剤を使います
  3. にはバス用洗剤と、クリーム状クレンザーを併用します

 程度により、これらは併せて使います。汚れといっても単純ではありませんので、洗剤とクレンザーで、それにクエン酸を加えるなど、これも一方法です。

 次ぎに、浴槽の材質別は次ぎの方法がお奨めできます。

 浴槽の表面が柔らかく、磨き砂やクレンザーでこすると傷のつく場合、例えば、強化プラスチック、ホウロウなどは、このような鉱物性のもの注意して使わないといけません。

 液体の洗剤、バス用洗剤などが穏やかで良いでしょう。

 硬質系の浴槽はクレンザー、クリーム状クレンザーが効果的です。これらが、どんな汚れにも一番良く落ちます。ただし、しつこい汚れにはいささか力がいります。

 大理石の場合、延寿湯温泉は「使用禁止」といいましたが、万一誤って使って汚れがついた場合は、まず、液体洗剤、次ぎにクリーム状クレンザー 微粉タイプを注意して使います。注意してというのは、大理石表面が柔らかいので、クレンザーによって、表面を傷つけるおそれがあるからです。目立たない部分で試して、すこしずつ拡大してゆきます。

 クリームクレンザーというのは細かい研磨剤入りの液体タイプの洗剤で、商品名では

 たとえば、「ジフ」日本リーバ、「ルックキッチンのみがき洗い」ライオン、「クリームクレンザー」ダスキンなどがあります。

 「ホーミング」花王はやや目の粗いクレンザーで浴槽表面の強固な炭酸カルシウムなどの結晶をごしごしこすって取るにはいいのですが、表面を傷つける危険があります。

 なお、銭湯の汚れ落しには、浴槽、床の材質はタイル系が多いので、新しい洗剤も登場してはおりますが、いまなお大量の磨き砂のたぐいが使われております。

 昔ながらの磨き砂もクレンザーという名前で出ております。たとえば「しらかばクレンザー」は福島県産天然白土80%にしらかば粉石けん20%という成分で、焦げつきや頑固な油汚れに最適と用途をうたっております。