ご家庭のお風呂に 湯温計を備えましょう

風呂の温度

2歳の幼い子供が風呂場で誤ってシャワーのレバーに触れて熱湯を浴び、火傷の治療を怠ったため、やけどによる敗血症で死亡するという痛ましい事件がありました。

前回、風呂釜、給湯設備につき解説しましたが、これら5種の設備の中には、操作を誤ると湯が高温となり火傷の危険が発生するものがあります。

しかし、最近の給湯タイプでは、温度設定に厳しく、センサーで制御しますので、誤作動のないかぎり高温の湯による火傷発生の心配はありません。

1.火傷の発生する温度

 10秒間 曝されたとした場合、火傷の発生しない湯温の限界は58℃です。

 30秒の場合は55℃、120秒の場合は52.5℃といわれております。

 火傷が発生するのは、皮膚の表面温度とその温度が接触する時間に関係します。

 ここでは,1度の火傷、赤くなる程度のものをいいます。ちなみに2度の火傷では水ぶくれが出来ます。

2.通常用いられる湯の温度

飲料用        50~55℃

シャワー    43℃

洗面・手洗い  40~42℃

ひげそり用   46~52℃

台所用 一般用 45℃

3.女性の好む湯の温度

食器洗浄     39℃

洗顔       37.5℃

手洗い洗濯    39℃

洗髪       40.5℃

入浴       40.5℃

手持ちシャワー  40.5℃

壁掛けシャワー  42℃

4.風呂・給湯設備の温度設定

 給湯設備の標準設計による 40.5℃

 東京都の銭湯の温度の基準 42℃以上(1991年にこれは改正された)

 家庭の風呂の温度は一般には42℃といわれていましたが、浴槽内の湯の温度は上下で 

 かなりの差があり、今では浴槽の給湯設備設計では40.5℃が標準になっています。

 風呂の温度測定は通常、水面下10cmで測るといいといわれています。

5.大阪の銭湯の場合 (源ケ橋温泉)

 銭湯は家庭風呂に比べてやや高めに設定しており、通常は42~43℃ぐらいにしています。しかし、季節により客の反応は異なりますので、季節に応じて標準温度は変えています。温度調節機能は最近の機器は優秀で、プラスマイナス1℃以内で管理され、サーモスタットは絶えず作動して温度を一定に保っています。

 浴槽の温度は基準を41.5℃におき、高めの限界は43℃で、これを超えてはいけないということで調節しているそうです。

 標準温度は季節によって次のように設定しています。

春 41.5℃、 夏 40.8℃、  

秋 41.8℃、 冬 42.5℃

6.お風呂の先生がお奨めする入浴温度

医学博士植田理彦先生(温泉療養システム研究会会長)による。

  • 大変気持の良い風呂が時には「魔の風呂に」転じることがある。11月から2月にかけて入浴の方法を間違えて15,000人の方が死亡している。

 まず問題なのが脱衣所が寒すぎることであり、次に熱い湯に入ることで、入浴前後に大きな温度差の出るのが健康に良くない。

  • 熱い湯に3~5分入るよりも、ぬるい湯に20~30分、ゆっくり入るほうがはるかに健康的である。
  • 熱い湯というのは42℃以上、42℃未満をぬるい湯といっている。温泉は大体42~43℃に設定しているので、こう言う温泉ではゆっくりできないであろう
  • 冬だったら40℃ぐらいが一番好ましい。湯温計と温度計は浴室にかならず備えて欲しい。
  • 日本人の体温は36~37℃、欧米人は34~35℃。欧米人はぬるい湯に入る。

7.医学的にみた風呂の温度(群馬大医学部草津分院のデータによる)

 平均30歳の若い男性9人に、7℃、42℃の湯に10分ずつつかってもらった時、42℃では血圧も、心拍数も大きく変化しており、健康には好ましくないという数字が出ております。37℃では何ら問題は発生しておりません。例えば、心拍数80拍/分の人が42℃の湯に10分つかると、12分後には130拍/分と上昇しますが、37℃ですと、心拍数の上昇はありません。

 42℃以上の風呂のは決して入らないように、というのが医師のアドバイスです。

8.入浴剤と風呂の温度

浴剤を入れた場合、ゆっくり入るのが効果的ですので、出来るだけ温度は低く、40~41℃ぐらいが良いでしょう。

 中味の溶解性については,入浴剤の成分では40~45℃ぐらいの温度差ではほとんど変りはありませんので、気にすることはないでしょう。溶解性は物質によって大きく傾向は異なります。参考までに食塩と砂糖をご覧ください。

水の温度と溶解性

水の温度0℃20℃40℃60℃80℃100℃
NaCl26.28g26.38g26.65g27.05g27.54g28.2g
蔗糖179.2g203.9g238.1g287.3g362.1g485.2g

9.入浴剤の温熱効果

  延寿湯温泉には無機塩類が配合されております。これは次のように皮膚への刺激作用および血管をわずかに拡張させ、保温効果をもたらします。

  1. 無機製剤による皮膚刺激
  2. 硫酸塩、硫酸イオンの血管内浸透による血管拡張 

 また、延寿湯温泉に配合されているセンキュウは皮膚血流量の増加を招き、血行促進による温熱効果に影響しております。

 入浴剤による保温効果は、身体を温めるのに好まれてはおりますが、人によっては、カユみを増すのではないかと心配される方もいます。たとえ、入浴剤は入ってなくとも、風呂の温度そのもので身体は温かくなりますので、実際、どの程度温熱効果がわざわいとなるかは個人差があるようです。

  1. いきなりシャワーをしないで、まず、蛇口で湯温を確かめる。
  2. 浴槽も同じこと、いきなり飛びこまないで、掛け湯の習慣を守る。
  3. 幼少児には、医薬品の容器と同様に、シャワー、蛇口など機器には手を触れないようにしておく。
  4. 給湯設備、風呂釜は構造上、42℃以上の熱湯が出るか、あるいは高温になることがあるのか確認しておく。最近の給湯設備は設定した温度以上にはならないようにして火傷に遭遇したら程度、部位、深さ、広さにもよりますが、救急病院への搬送の必要な場合があります。

 ここでは、それほどでもない場合を対象にしております。とにかく部位を冷やすことです。

 流水、たとえば、水道の水のように清潔な冷たい水をふんだんにかけることが第1です。保冷剤などで冷やしすぎるのはよくないとのことです。水ぶくれは潰してはいけません。感染のおそれがあるからです。

<参考文献>

  1. 飯島裕一:温泉で健康になる、岩波書店(2002)
  2. 日浴工会報 vol5(2003)、日本浴用剤工業会
  3. 鎌田元康編著:給湯設備のABC、TOTO(1993)
  4. 日本浴用剤工業会台68回理事会議事録(2003.11.7) 

<NEWS>

1.「いい風呂の日」を制定 11月26日

日本浴用剤工業会にて申請、日本記念日協会から認定される。

2.「いい風呂の日」 11月26日のキャンペーン 日本浴用剤工業会主催で10月~12月の3ヶ月にわたり、お風呂キャンペーンが展開される。
11月26日の2、3日前に週刊誌や新聞にキャンペーンの広告が出る。
一般の人からはがきでキャンペーンや入浴剤、石鹸などについて意見を書いてもらい、応募者には抽選で賞品が贈られる。

3.ノーリツの給湯設備の「入浴剤の風呂釜に関する取扱い説明書」を修正

 これまで「酸・アルカリを含んだ入浴剤は使用しないでください」との表現が使用説明書に書いてありましたが、誤解を招くというのでノーリツは次のように改めたという報告が日本浴用剤工業会よりありました。

 「硫黄を含んだ入浴剤は使用しないでください。

 入浴剤、風呂釜洗浄剤・洗剤などを使用するときは、注意書きをよく読み、正しく使用してください。

 入浴剤、風呂釜洗浄剤の種類によっては、機器の熱交換器を腐食させたり、ポンプの能力が低下する原因になるものがあります。

 これらを使用して追い炊きしたときに、異常音が出たり、追い炊きできなくなる場合は、使用をやめてください。

 風呂釜洗浄剤の使用に際しては、注意書きをよく読み、すすぎを十分に行ってください」