延寿湯温泉の包装材料

 原油高が続いております。その関連で、最近の経済欄では原材料値上げの記事で賑やかになりました。日経新聞(2005年3月31日)には、次のような記事があります。

 「未到の高水準で推移する原油価格はモノの値段にもさまざまな軋みを生んでいる。素材インフレも1年を突破、企業努力によるコスト増吸収にも限界が見え始めた」

 プラスチックの原料にもなるナフサ(粗製ガソリン)の価格が、この3月末、1トン500ドルという過去最高値を記録しました。

 プラスチックフイルムの包装材料はこのところ値上がりのニュースばかりで、延寿湯温泉にも影響が出始めました。プラスチックフイルムというと、商品の包装には欠かせない材料であり、今日の物流革命、ドラッグストアも、この包装資材があってこそ成り立っているといえましょう。延寿湯温泉もプラスチックフイルムの特徴を大いに生かしております。材料がどのように選択され、それらが便利な使いやすい商品に役立っているところをご理解いただければ幸いです。

1.プラスチックフイルムはビニールだけではない

 透明の包装フイルムといえば、マスコミではビニールと表現します。たとえば、「花見のあとにはビニールが散乱」と出てきます。しかし、実際には包装用にビニールフイルムが使われるということはほとんどありません。かつては、ビニールの代わりにナイロンという言葉が良く使われていましたが、これも単独では使われていません。

 今日、出回っている包装フイルムは、ほとんどがポリエチレンかポリプロピレンもしくは貼りあわせフイルム(ラミネートフイルム)です。

 最近、包装にはリサイクルマーク表示が義務付けられております。そのマークにはプラスチックの場合、PPとかPEとか、マークとともに材料識別表示がしてあります。

 参考までに、リサイクルの識別表示では、次のようなプラスチックの略号の使用が認められています。ここでは主として医薬品、日用雑貨品などに使われるフイルムに絞りました。本文では、この略号を用いております。

PA  =ポリアミド  ナイロンのこと、PA単独のフイルムは通常あまり使わない。
PC  =ポリカーボネート  成型品に多い。たとえば、カップ、哺乳瓶など。
PE  =ポリエチレン 成型品、フイルムにもっとも広く使われている。PET  =ポリエチレンテレフタレート  ペットともいう。飲料用ビンに多い。
PP  =ポリプロピレン これも汎用プラスチックの一つ、成型品にも多い。
PS  =ポリスチレン  フイルムよりも、容器など成型品に多い。PVC   =ポリ塩化ビニール 単独ではほとんど使われない、ただし、医薬品のブリスター包装(PTPともいう)には成型品として多く使われている。PVDC =ポリ塩化ビリデン 商標ではサラン、サランラップなどがある。

 ここで使っている成型品という用語は、フイルムのような軟性ではなく、型に流し込んで作った容器あるいは道具など硬いものをいいます。もう一つ、「単独では」と断っているのは、フイルムはベニヤ板のように特徴あるものを2種、3種貼り合わせて使うことが多く、単体では使わない場合があるからです。これをラミネートフイルムといいます。

2.アルミ蒸着フイルムという包装材料

 蒸着(じょうちゃく)フイルムはプラスチックスよりも歴史は浅く、最近、広く使われるようになりました。名前が難しいのですが、蒸着フイルムそのものは菓子や雑貨品にも使われていますので、皆さんのまわりには十分出回っています。その使用例の一つが延寿湯温泉の50g包装に使われている、橙色の山のデザインされた袋です。

 数々あるプラスチックス包装材料は、それぞれ目的に応じて科学的に選択されます。その仕事を包装設計といい、医薬品では製剤学の一分野なのです。延寿湯温泉の材料選択も

 この過程を経て、最適材料が選ばれました。

 アルミ蒸着フイルムは、一見金属風で、アルミ箔と似ておりますが、材料は金属ではありません。近づけて明るいほうを見ると、透けて見えます。アルミ箔では見えません。蒸着フイルムはプラスチックフイルムに属します。たしかにアルミ箔はニオイ、水蒸気、光の遮断には大変すぐれた材料です。それにもかかわらず、延寿湯温泉にはなぜ、このアルミ蒸着フイルムが使われているか、考えてみましょう。

 アルミ蒸着フイルムというのは、プラスチックフイルムにアルミニウムの分子がびっしり張り着いているのです。真空状態でアルミニウム分子が蒸発することによって、フイルムに膜状にくっつきます。この工程を蒸着といいます。蒸着という言葉は広辞苑にも出ていますので、かなり普及してきたのでしょう。

 延寿湯温泉の蒸着フイルムはPETにアルミニウムの膜ができ、その上にPEが貼りあわされ、3層になっています。アルミニウムの層は非常に薄く、通常、ミクロン単位以下です。薄いとはいえ蒸着したアルミニウムは、ガス通過を遮断する能力があり、また、光の通過も抑えて、金属アルミニウム箔の良好な特徴を引き継いでいます。金属アルミニウム箔の場合、厚みは10ミクロン(0.01mm)ですと、金属箔の欠点である折れやすさが出て、その折れ部分に小さな穴があき、これがガスを通過させてしまうことになります。アルミ蒸着フイルムはPETやPEの特徴が生かされ、折れ曲げにも強いという性質があります。

 延寿湯温泉のように、香りを逃さない、湿ってはいけない、そういう中味を保護するには、アルミ蒸着フイルムは最適ということになります。もちろん、経済性にも適っております。

3.延寿湯温泉の中味は煎じ薬用の袋

 延寿湯温泉の中味は不織布の袋に入っております。プラスチックのない時代であれば、目の粗い布、あるいはガーゼなどの袋に収納されていたでしょう。生薬の煎じ薬も同じことです。延寿湯温泉を直接入れている袋の材料は一般名を長繊維不織布といい、目のやや粗い布状であり、その材料はPET(テトロン)の長繊維がPPが貼り合わさっております。PET(テトロン)は、生薬の硬い材料の突き破りにも強度があり、長繊維で通気性に優れ、一方、材料そのものも水に強い、という特徴があります。

 さらに、この材料は熱接着性が良く、高速で自動包装するのに適しております。浴槽の中で袋を少々揉んでも、破れて中味の飛び出す事はめったにありません。ただし、袋は目が粗いので、微粉のいくらか出ることは避けられず、揉みすぎてはいけません。延寿湯温泉は一種の煎じ薬であり、使い方も同じですので、この包装材料はティーバッグや、煎じ薬に使われております。

4.リサイクルの問題

 プラスチックも先に述べたようにフイルムは貼り合わせが多いため、分別収集にはやや難点はあります。しかし、原料は冒頭に述べたようにナフサが大部分ですので、近い材料にはあります。また、貼り合せも、錠剤カプセルのブリスター包装のように、金属とプラスチックの接着がなければ、リサイクルはある程度可能になります。

 延寿湯温泉の袋には、それぞれリサイクルマークを表示して、材料名を付記しておりますので、どうぞご覧下さい。

 沢山のフイルムをどのように判定するかは、マークの識別表示で分かりますが、本来はちょうど繊維の区別のように、木綿、ウール、絹など手触りで区別するもであり、慣れてくると、判定できます。マークの表示を見る前に一度感触で区別を試みてください。

 また、ビニールやナイロンをプラスチックフイルムの代名詞のように、使わないようお願いします。

<参考書>
JISハンドブック 包装・物流  日本規格協会
日本製薬団体連合会:医薬品等の容器包装の識別表示ガイドライン(2001)