ショウガの仲間たち リョウキョウ
リョウキョウはショウガ科の植物ですが、このところ、ショウガ科の仲間は大忙しです。
ご存知のように、ウコン、ガジュツ、ショウキョウとエースが並んでおり、マスコミでも話題になっております。日本料理に欠かせないミョウガも、このショウガ科に属しております。
ショウガ科の共通点はそれぞれ、薬用、食用には根茎が用いられるのですが、爽やかな精油を含み、大きな、いかにも南国的な葉っぱと、それに独特の大型の花です。
1.消化器系統に大活躍
春から夏にかけて引っ張りだこになったのがガジュツ末です。医薬品としてはわが国では江戸時代以降で、さほど古くはありません。胆汁分泌促進にすぐれ、芳香性健胃剤の原料になります。地味な薬で、あまりこれまで省みられなかったのですが、急に外へ連れ出されて、さぞガジュツも戸惑った事でしょう。ガジュツは薬用以外に染料にも使われます。
ウコン末の方は以前から根強い人気があって、肝臓や胃腸の薬として使われています。
一般的にショウガ科の粉末は黄色ですが、その最たるものがこのウコン末で、黄色色素クルクミンが主成分です。食品の黄色着色にも使われております。カレー粉、沢庵漬けなどの黄色はウコンによる場合が多いようです。一方、古来、紙や布の染料にも使われ、防虫効果が期待できるといわれております。
リョウキョウにはブドウ球菌や肺炎双球菌ほか抗菌作用があるというので、その目的でも使われることがあります。マラリアに用いるという記述もあります。何が効いているのかは不明です。精油はシネオールやオイゲノールほか、数種含まれております。消化器系統には消化不良、鎮痛,嘔吐などに用いられます。リョウキョウは漢方製剤「安中散」の主要成分です。
2.混乱している名称
ショウガ科系統の生薬、とくにウコンは和名と中国名とが必ずしも一致しないので、現場ではしばしば混乱することがあります。リョウキョウ自身はこの混乱には巻き込まれておりません。
和名 学名 中国名 英名
キョウオウ(俗名ハルウコン)Curcuma aromatica Salisb. 鬱金(ウコン) Wild turmeric
ウコン(局方品) Curcuma longa Linne 姜黄(キョウオウ) Turmeric
ガジュツ(俗名 白ウコン 紫ウコン)Curcuma zedoaria Rose 莪蒁 Zedoary
秋ウコンというのが、俗名で、特に健康食品の世界では通用しておりますが、医薬品のウコンにはそういうものはなく、クルクマ・ロンガのみです。
もう一つややこしいのがショウキョウ(生姜)です。漢方の古典で生姜というと、新鮮な、店で野菜として売っているショウガをいいますが、このショウガを日本では生姜とはいいませんし、薬用には使いません。日本薬局方の生姜は乾燥したショウガをいいます。これを漢方では乾生姜といいます。また、生薬には乾姜というのがありますが、これは蒸して乾燥したショウガであり、漢方では薬効が異なるので乾生姜とは別物として扱います。
3.リョウキョウの産地
ショウキョウはわが国には紀元前に到来したと言いますが、リョウキョウは奈良時代かと思われます。ショウキョウと違ってリョウキョウは医薬品の性格が強く、そのために伝来が遅かったのでしょう。産地は中国および台湾で、広東省、雲南省ほか広く栽培されています。現在は海南島産がもっとも多いといいます。わが国に来ているリョウキョウは99%が中国産で、和産というのはごくわずかです。
現在のショウガ、ショウキョウは大部分が中国産で、最近、特に中国での使用が増加したために、価格が上昇しております。日本産のショウガは野菜扱いが多く、医薬用は0.02%です。
4.入浴剤としてのリョウキョウ
良いリョウキョウほど香りは強いといいます。味も辛いほうがいいそうです。入浴剤には味は関係ないのですが、香りは大いに関係があります。根茎を使うのですが、ここには0.5~1.5%の精油が含まれております。精油成分はオイゲノール、ピネン、シネオールなどですから、いい香りがします。これは気持ちを鎮めるのに効果的です。また、皮膚をしっとりさせるでしょう。
もう一つの薬理作用に抗菌作用があるのが特徴で、これは皮膚疾患治療に期待ができます。しかし、濃度はあまり高くないので、安全である反面、十分の効果は期待できません。抗菌作用はリョウキョウのどの成分に薬効があるのか、まだはっきりしません。入浴剤としていいのは、この抗菌作用が煎じ液にあるといいますので、まさに浴剤向けです。
<参考文献>
難波恒雄:原色和漢薬図鑑、保育社(1980)
日本特殊農産物協会:薬用植物需給の現状と将来展望(1999)
牧野和漢薬草大図鑑、北隆館(2002)
日本大衆薬協会他:汎用生薬便覧(2004)