入浴剤と薬事法

 昨年4月の薬事法大改正は、主として製造販売業、製造業が中心でしたが、このたびの

 6月の法改正は、一般薬の販売制度、いわゆる薬局、薬局以外の店頭で販売される医薬品の販売制度、および取り扱い医薬品のリスク分類に絞られました。

 入浴剤とか石鹸は通常は医薬品ではないので、ただし、厳密には医薬品もありますが、今回の6月の法改正は一般薬ほど直接の影響はないようです。

 入浴剤と薬事法との関係を今回は取り上げます。

1.ややこしいのが入浴剤です

 大阪梅田の阪急百貨店本店の薬局(今は7階)には延寿湯温泉が店頭に並んでおります。

 阪急百貨店の本店は目下工事中のため売り場が狭くなっており、入浴剤は薬局のみですが、ほかの百貨店では入浴剤売り場は薬局だけではなく、最近はやりのお風呂コーナー、芳香剤・化粧品コーナー、入浴グッズ、リラクゼーション売り場・・・などにも見られます。

入浴剤の売り場はさまざまです。石鹸と入浴剤は比較的近いところにありますが、これは商品の性格・働きの場が似ているからかもしれません。

 入浴剤は法律的にはどこにあれば、落ち着くのでしょうか。

 答えは、通常はどこでもいいのです。ただし、通常と断わるのは、入浴剤には医薬品に該当するものがあるので、この医薬品の入浴剤以外はという意味です。

 大部分の入浴剤は医薬部外品であり、そのほか化粧品、雑貨品(前記の三者以外という意味で、ここでは雑貨品となずけて仮に区別しておきます)とがあり、法的に4種の区分けがあります。

2.医薬部外品の入浴剤

 入浴剤(厚生労働省は浴用剤という、両者は同じものです)の主流は医薬部外品であると述べましたが、医薬部外品というのは、今回6月改正の薬事法(2006年6月14日公布)では改正され、第2条に次のように定義されております。この条文は、これまでの法と、本質的には医薬部外品の定義、枠は変わりませんが、組替えがあって、次のようになっております。しいて言えば、厚生労働大臣の指定によるものが1項目として、独立したことでしょう。

第2条 第2項

この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であって人体に対する作用が緩和なものをいう。

1.次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物であって機械器具等でないもの

イ.吐きけその他の不快感又は口臭もしくは体臭の防止
ロ.あせも、ただれ等の防止ハ.脱毛の防止、育毛、又は除毛

2.人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第2号、又は第3号に規定する目的のために使用される物を除く。)であって機械器具等でないもの。

3.前項第2号または第3号に規定する目的のために使用される物(前2号に掲げる物を除く)のうち、厚生労働大臣の指定するものをいう。(以下略)

 入浴剤は、この第3号による厚生労働大臣の指定で次のように告示されております。

平成7年11月24日厚生省告示第202号

1.衛生上の用に供されることが目的とされている綿類(紙綿も含む)

2.次に掲げる物であって、人体に対する作用が緩和なもの

(1)、(2)、 (4)略

(3)浴用剤

 この浴用剤について、厚生省は1962年に効能や成分を説明し、さらに医薬部外品になる場合について、浴槽に投入して使うものに限定するといっております。体に塗布するものは医薬品であり、石鹸のように浴槽に入れないものは医薬部外品ではない、と説明しております。

 化粧品も薬事法の管轄下にあり、薬事法には第2条の定義で、つぎのように規定されております。

 「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚もしくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これに類する方法で使用されことが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう」

 法的区分の表示は、医薬品と医薬部外品はそれぞれ明瞭に表示することが薬事法に定められておりますので、包装には次のような区分の表示が、どこかに出ているはずです。

医薬品
医薬部外品

化粧品の場合は薬事法にはこの規定はないようですが、浴用化粧品あるいは入浴用化粧品
などと表示している場合が多いようです。雑貨品の場合は、これがありません。

3.効能の表示

 入浴剤の法的な区分は効能の表示によって違ってきます。

 医薬部外品の場合、入浴剤は効能の表示が認められております。次のように入浴剤には以下のとおり一定の効能が定められています。

 あせも、荒れ性、うちみ、肩の凝り、くじき、神経痛、しっしん、しもやけ、痔、冷え症、腰痛、りうまち、疲労回復、ひび、あかぎれ、産前産後の冷え症、にきび など、

 他に、いんきん、たむし、水虫、ひぜん、かいせんの追加される場合もあります。

 延寿湯温泉の効能は、何分にも50年前の製造承認であるため、効能の範囲はやや狭いです。

 化粧品の入浴剤は表示できる効能効果は「皮膚の清浄」に限定されますので、表現としては、たとえば「皮膚に潤いを与える」が用いられますが、表現はさまざまです。医薬部外品のような「効能・効果」の欄はありません。

 たとえば、ある化粧品の入浴剤は 次のように説明しております。

「・花や草木など天然ハーブの香りが、あなたの疲れた心をやさしく包んでくれます。気分を集中したいときなどにどうぞ。

 ・アルニカ・セージ・セイヨウキズタなどのハーブエキス(保湿)がお肌を美しくなめらかにしてくれます」

 雑貨品の入浴剤はもちろん効能は一切表示できません。たとえば、つぎのような説明をしている商品があります。

 「ほんのり甘くやさしい香りが、安らぎのバスタイムを演出します」

 雑貨品の場合は、入浴剤の薬効というよりも、香りを楽しむことを目的としている場合が多く、あまり薬効にはこだわらないようです。もちろん、なかには民間療法的な薬草を配合して、薬湯的なイメージをかもし出している商品もあります。

4.配合成分のちがい

 医薬部外品の場合は、承認の基準に一定の枠があり、入浴剤の基礎になる成分は配合すべきものとして割合なども決められております。生薬を配合する場合は通常は、配合してもいい生薬が指定されていますので、その範囲内のものが配合されます。

 延寿湯温泉の場合は、先に触れたように承認が非常に古いので、ユニークな生薬の配合が認められております。数ある入浴剤のなかで、唯一、マツカワ(イヌカラマツ)の配合が認められております。

 化粧品の場合は、配合できる成分が指定されており、配合成分は名称を全部表示するよう2001年に法改正されました。

 雑貨品の場合は特別に制限はありませんが、成分はその入浴剤のポイントになりますので、桃の葉、ヨモギの葉など、あるいは香料として使われた材料名などを任意に表示します。効能を一切表示できないので、中に何が入っているのか明示しないと、商品購入の判断ができません。 たとえば、商品の特徴を「100%天然のハーブを使用しております。無香料・無着色  カモミール」と冒頭に明記しているものがあります。