アンチエイジングは皮膚から

 今や、マスコミ、インターネットではアンチエイジングの記事や広告が非常に増えてきました。去る3月、大阪で「アンチエイジングと漢方」というシンポジウムがあったのですが、満員の盛況でした。アンチエイジングというとどうしても中高年向きになってしまいます。ますます増加する40歳以上から定年前後のかたがたに特に関心が高いようです。

 アンチエイジングとは、「いつまでも若く」、「若さを取り戻す」とか「甦る若さ」であるとか、いろいろの説明がありますが、要するに若くない人が対象になっております。

 アンチエイジングで話題になるのは、外から見て目立つということがあって、マスコミ、インターネットでは、皮膚科領域に目が向けられているようです。

 本稿では、先のシンポジウム「アンチエイジングと漢方」の話題や、皮膚にかかわることを中心に話を進めます。

1.「アンチエイジングと漢方」のシンポジウムから

 このシンポジウムはKAMPO EYES シンポジウム 2007「アンチエイジングと漢方」といって、近畿大学の薬学部薬用資源学研究室(松田秀秋教授)が中心になって3月17日に開催されました。 

 最初の会長講演は若々しい髪の毛に焦点が当てられました。目に付くといえば髪の毛は一番でしょう。いったん白くなった髪の毛は、それが内服の薬物で黒くなるということは、通常はありえないことです。今回の講演内容も、白髪、抜け毛、薄毛の予防を目的とし、毛髪の再生に大きな影響を与えるメラミンの産生にかかわる生薬を探索し、胡椒の葉にその作用があることを発見され、発表されたものです。まだ、基礎実験の段階ですが、将来の髪の毛の若返りに期待される育毛剤の開発につながる可能性があります。

 化粧品の立場のアンチエイジングでは、皮膚のたるみ、しみ、小じわ、など加齢に伴う肌の悩みに、化粧品で改善をという発表でした。乾燥防止、UVカットなどに効果ある化粧品の役割・開発が話題になりました。

 近大病院の皮膚科の山田教授はアンチエイジングドックの病院における実際を特別講演として発表されました。アンチエイジングというのは、指標が常にその年代のデータの上位にあって、10~20年は若くないといけないということでした。たとえば、骨密度を測定しても、50歳の人は50歳の平均データで満足してはいけない、30~40歳の数字でないと、先々、安心できないということです。

 アンチエイジングにはいろいろなデータの集積、たとえば、骨年齢、筋肉年齢、神経年齢・・肌年齢などから判定します。山田教授は皮膚科の先生ですので、とくに肌年齢、皮膚の老化に詳しく話をされました。養生として、日常の生活、食事、精神生活、運動指導、サプリメント補給、漢方治療など総合的に科学的に取り組まねばならないということでした。

2.皮膚のアンチエイジング

 肌の変化、とくに老化は一番目に付くので、アンチエイジングの目玉でもあります。シンポジウムでは、化粧品会社の開発研究所長さんが、企業における、この分野の取り組み状況を発表されました。40代、50代には、シミ、シワ、小じわ、たるみ といった加齢に伴う肌の悩みが非常に多いということです。これから団塊の世代がますます、この中に加わってくるというので、開発に拍車がかかっているそうです。

 対策としては、乾燥の防止、線維芽細胞の増殖や機能向上、紫外線のカットなどに向けられております。

 乾燥の防止では、角層のバリア機能の低下ではなく、保湿剤も従来のグリセリン、ワセリンではなくアミノ酸やヒアルロン酸が保湿成分の中心になり、さらに生体内で皮膚の保湿機能を高めるコラーゲンやセラミドなどの開発に向かっています。

 小じわ、たるみ防止では、線維芽細胞の機能低下から皮膚が萎縮して厚みがなくなって弛緩が発生するということで、線維芽細胞の増殖促進剤あるいは、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進する物質の研究が進んでおります。

3.メタボリックシンドロームとのかかわり

 メタボリックシンドロームという言葉は、メタボと省略されたりして、昨今広くゆきわたっております。アンチエイジングのシンポジウムでもこの用語は何回も出てきました。

 アンチエイジングは抗加齢、メタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群と、それぞれ日本語では訳されていますが、すっきりはしていません。

 区別しなければならないのは、アンチエイジングは特に特定の疾患を対象にしているのではなく、歳をとるに従って、心身ともに、より若々しく暮らしてゆこう、という一つの健康へのキャンペーン、目標であります。一方、メタボリックシンドロームは、すでに、好ましくない症候が出てきており、今は病気ではないけれども、これが原因で、重大な疾患に発展する可能性があるので、要注意という警告です。メタボリックシンドロームにならないように、その基準が示されており、これを指標として自己管理をすることになります。たとえば、腹囲=へその周りが男性85cm以上、女性は90cm以上あり、高血圧、高血糖、高脂血症のうち、二つ以上が該当するという基準に該当すれば、メタボリックシンドロームという症候があるということです。

 アンチエイジングの場合でも、自分の年齢の数字よりも、10~20歳若くするように、という目標値が示されることはあります。

 メタボリックシンドロームにならないようにするために、上述の基準ですが、簡単に言えば、第一関門は内臓脂肪を減らし、肥満にならないように、ということです。

 このために、皆さんはどんなことをしているか、日経の記事(2007年3月26日)を見てみましょう。全国の20歳以上の男女千人が対象で複数回答ありです。

  • 食事のカロリー、量を落とす 65%
  • 間食を控える 57%
  • 甘い飲み物を控えて、水・茶を飲む 53 %
  • 休みの日に散歩する 42 %
  • 会社や駅ではできるだけ階段を使う 21 %
  • 医療機関で検査・診療を受ける 20 %
  • スポーツジムに通う 14 %
  • 医師の奨めた薬を使う 12 %
  • ネットで健康管理の情報をチェックする 9 %
  • 歩数計を身につけてチェックする 8 %
  • 会社、自宅の一つ前の駅で降りて歩く 7%

4.皮膚の若さも入浴から

 たびたび本紙で取り上げてきましたが、「体の冷えは万病の元」と言われるこのごろ、とくに血の巡りを良くすることが、すなわち血流の改善が健康保持、アンチエイジングには望まれております。若さはお肌から、お肌の若さは血の巡りを良くすること、その一環で

 入浴、お風呂が好きになることが大事なのです。なるほど、夏はあっさりシャワーでという方もいますが、血の巡りを良くするには、ゆっくりぬる目の湯につかること、これが肝心なのです。

 メタボリックシンドロームの健康法というか、心がけるテーマでは、食事と運動があくまでも主体です。先の調査ではもちろん、入浴ずばりはありませんが、とにかく、汗を流すことが内臓脂肪を減らす一つの対策になりましょう。かつては、その目的のためにサウナ風呂が流行りました。昨今はさほど、サウナ風呂は話題にはなりません。やはり、どこの家庭でも手がるに実施するには制約があるからです。

 アンチエイジングでは、心身の安定も欠かせません。精神生活ではストレス発散を上手にしなさいといわれています。香り豊かな入浴剤で、ゆったり、心を和らげるのはいかがでしょうか。3月27日の日経新聞には洗剤や入浴剤では意外感のある香りのある商品が喜ばれているという記事が出ていました。香りを楽しみたい、リラックスしたいなどの理由があがっておりました。