マツカワ(イヌカラマツ)の臨床の文献紹介

 入浴剤 延寿湯温泉の主役であるマツカワ(イヌカラマツ)については、長年、民間療法で用いられてきたという実績はあるものの、学問の世界にはこれまで縁が薄かったため、医学論文はわずかしかありません。中でもわが国の研究論文は今のところ、一つもないというのが現状です。

 このほどマツカワにおける世界の医学文献を探索して、原文を入手いたしましたので、その一部をここに紹介します。入浴剤には直接関係ないのもありますが、世界におけるマツカワの研究の現状を理解していただくために、引用しました。 原文は中国語もしくは英語ですが、当方にて適宜、抄訳いたしました。

1.マツカワの成分 pseudolaric acids A and B の性ホルモンへの影響

Endocrine activity of pseudolaric acids A and B and their effects on sex hormones,

Prostaglandins, uteril, and fetuses

 マツカワの根から分離されたpseudolaric acids A and B(以下PA,PBと略す)は実験動物には顕著な抗受胎作用があるといわれてきた。今回の研究ではPA,PBにはエストロゲン活性も、同抗活性も認められなかった。しかし、妊娠中の動物にPA,PBを投与したとき、胎盤、子宮大きさは縮小し、血管収縮薬による虚血効果は大であった。

WANG Wei-Chang ほか中国科学院上海薬物研究所、上海200031、中国

[ Acta Pharmacologica Sinica 1991 Mar; 12(2):187-190]

2. The  isolation  and  structural  elucidation  of  four novel  triterupene  lactones, psedolarolides A,B,C, and D, from pseudolarix kaempferi

 4種の新しいトリテルペンラクトンpseudolarolides A,B,C,D がマツカワの根皮から分離された。 中国の民間薬 「Tu Jin Pi」 は長らく真菌の皮膚疾患治療に使われてきた。この分離された成分のうち、 pseudolaric acids A and Bには抗真菌、抗受胎、抗ガン作用などのあることが、研究されてきた。本研究はマツカワの種の抽出物にて抗がん作用を実証した。

GUO-Fu Chen et al ,中国上海医科大学薬学部天然物化学部門

[Journal  of  Natural Products  Vol.56,No.7,pp1114-1122,July1993]

3.マツカワの抗真菌作用

Antifungal evaluation on pseudolaric acid B, a major constituent  of   pseudolarix kaempferi

マツカワ(イヌカラマツ)の主成分pseudolaric acid Bは抗真菌作用を持つ。

pseudolaric acids  Bは白鮮菌、皮膚糸状菌、カンジダには抗菌作用が認められたが、クリプトコカスには無効であった。この抗真菌作用は強く、マクロライド系抗菌剤であるアムホテシリンと同等の効果を具備する。

マツカワは根および樹皮が皮膚真菌症に用いられ、中国の伝統医薬品として使われている。 pseudolaric acids  B の毒性はきわめて弱い。

Erguang  Li et al , School of Pharmacy, The University of  Mississippi, USA

[Journal of Natural Products  Vol.58,No.1pp57-67 Jan.1995]

4.Pseudolaric acids  B のカンジダへの抗菌作用

 マツカワ(イヌカラマツ)からはいろいろな化合物がえられるが、8個の化合物のうち、pseudolaric acid BはCandida albicans に対して強い抗菌作用を示した。そのほかの化合物には顕著な抗菌作用はみられなかった。

Xing-Cong Li et al , School of Pharmacy, The University of  Mississippi, USA

[Journal of Natural Products  Vol.62,,No.5 pp767-769 May 1999]